医師臨床研修、大学病院側「見直しを」 学部長・院長会
この記事を読んでしばし考える。
*** 背景には、大学病院ではより専門的な患者の治療に追われて、研修で総合的な診療能力が身につけにくい、などの考えがある。 特に地方の大学では、卒業した若手医師が研修先に大都市の大学病院や民間病院などを選ぶ傾向が強く、2年間の研修期間が終わっても、 医師が戻ってこないという悲観的な見方が強い。 ***だそうだ。
でもなんか違うような気がする。 少なくとも右脳が働く現場には医師が戻ってこないという悲観的な見方はない。 でも先日学会でお話したある国立大学の先生からはそのようなニュアンスも感じ取れた。 でも根本はもっと違うところにあるのではなかろうか??
今の研修医を見ていると、医学部の実習の延長にしか見えない。
研修医制度の変更を行う時も、まず制度ありきで システムの形態だけ整えて実際の教育現場への配慮が間に合わなかった (忘れていた?)ように感じる。
ここに大きな問題があると思う。 医師の仕事は心構えから技術まで先輩から教わる事がほとんどである。 いわゆる超縦型社会である。 実際の現場での細かい事は本などには書いてない。 正しい知識に基いた豊富な経験がモノを言うのである。 だからみんな医局と言う名の徒弟制度に逆らわずに入って行くのである。
ではそのような中で、現行の所属意識の弱い臨床研修制度ではどうなるだろうか? 研修医がかわいく無いのである。なぜか? 将来的に自分と同じ職場で働くかどうかわからないからである。 それよりは現状で自分と同じ職場でずっと働き続ける後輩を指導したほうが良いと思うようになる。
右脳は、今の当院及び近隣の研修施設の研修医は、 右脳の時代よりも遥かに密度の薄い研修しかしてないと感じている。 ちなみに右脳が研修を置けた大学病院は、開学以来スーパーローテートシステムを採用しており、 最初の2年間のうち一年以上を耳鼻科以外での研修に費やした。だから余計に強くせっかくなのにもったいないと感じる。 #あくまでも右脳の感じである。勘違いがあるかも知れない。ご容赦の程を。
後もう一つの問題は研修後の雇用問題である。
*** 研修は昨年度から必修化され、研修内容や給与、立地などをもとに、研修先を選べるシステムが整った。 その結果、大学病院を研修先に選ぶ医師は7割から5割に減少。定員を満たすことができた大学は数校にとどまっている。 *** らしい。
確かに地域の大きな病院や大都会の病院の方が給料や待遇が良いらしい。 でもちょっと待って欲しい。 その病院は、研修医の2年間が終わった後の雇用まで保証してくれているのか?
普通に考えたら、立地条件が良く都会にある病院が、たった二年間研修医として働いた医者を 一人前扱いとして雇用する事なんてありえないと思うが。
実際に2年終了後の雇用先が見つからず自分の将来に不安を覚えている研修医も散見される。
そのまま大学病院や指導医のいる地方の大きな病院で雇用してくれたら良いが、 なかなかそんなあまいものでは無いと感じている。 ましてや二年で独立する事なんか不可能に近い職業だし。
指導医のごく平均的な人間感情として、同じ3年目を指導するなら 自分の病院(又は大学)で研修を受けたほうに力が入るだろう。 研修医側もそのような環境の中で良い研修を受けようとすれば、 指導を受けられる医師の数に限りがあるため競争が激しくなるのが現実だと思う。
医者はいくつかの病院のよき指導者の下で研修するほうが、 一流に触れる機会も増え自分のキャパが大きく広がる。 一所にとどまれば井の中の蛙大海を知らずになってしまう事が多い。
ですから医学部の6年生のみなさま、自分の研修先を決める場合は、 研修医の間の研修内容と同じくらいに 研修終了後の保障がある病院を選んでください。 それが曖昧だと一生後悔する事になりますよ。
※例えば… 耳鼻科医になりたい。 →耳鼻科のある研修指定病院で研修を受けた。 →その病院の耳鼻科医の定員の空きが無いので3年目以後はやとってもらえない。 →結果的にその後の就職活動が必要になる。 って事です。
一部では大きく期待されて始まった現行の医師の臨床研修制度。 実は現場で施行前から危惧されていた事が今まさに現実になろうといるし、 ちょっと前からすでに歪は生じていたと感じている。 #今日は長い文章を書くなぁ…(^^;)。
※トラバ先を見ての追記(^^;)。 トラバ先のたまさんのエントリーを見て追記(^^;)。
右脳が今の大学病院を選んだ理由。それは母校であると同時に当時としては珍しかったスーパーローテートシステムが確立されていたから。 以前のスーパーローテートシステムって『医局に属してから他科の研修を行う』というものでした。 #麻酔に救急、脳外科に内科…etc。おかげさまで緊急疾患のトリアージと救命救急の一時処置だけは今でも普通に出来ます。
しかし現行のものはそのシステムとは程遠く、『研修医として所属し、色んな科をまわる』というものです。 研修システムは将来の希望科によって四つに分けられます。 これだけ色んな科があるのにたったの四つです。 当然お客様扱いをする科もあります。 研修医自体、仕事上でなにか悩みを抱えた時も相談する先輩がいません。 そのような理由から、研修途中でのリタイア率が以前に比べて高くなってきているのも事実です。 医局に所属してから研修に出てた時代は何かあってもすぐに先輩からの叱咤激励がありました。 そう言う意味では上下の関係が稀薄になったといわざるをえません。
たまさんのように、目的意識があって市中病院を選び、そこのスタッフとして扱ってもらい、 ある程度先行きの問題も解決されているのであればほぼ問題は無いのです。 問題はそのような事がまったく無い場合であり、現実大きな問題になってきているようです。
別に今のシステムが悪いとか大学病院で無ければいけないだとかは言いません。 ただ、所属意識って大事で『困ったときに助けてもらえる』という心のよりどころが必要だと思います。 #まぁうちの病院は田舎の私立大学なので、卒業生も多いし、ある意味大きな市中病院の要素も…。だから各科の垣根が低い低い(^^;)。
僕の友人でもたまさんと同じような理由で市中病院に行った人もいます。 要は自分が将来に向かって何が必要なのか?を考える。また行政側はうわべだけをなぞるのでは無く、 もっと根本からこの問題に取り組む必要がある。と言う事ですね(^^;)。
ただ、一点だけ市中病院で問題があるとすれば… 『最先端医療の開発に携わる確率が減る』 という事だけでしょうか。
やはり医師として仕事をしていると、世の中に情報を発信する必要が出てきます。 その時に自分が携わっている医療よりも新しい良いものがあるかも知れません。 また、その新しい良いものを開発する機会があるかも知れません。 そのような機会に恵まれるのは非常に幸運な事でしょうが、 それはやはり研究機関に勤務している医師のほうがめぐり合う確立が多くなるのが事実なんですよね。
このサイトではバカな事ばっかり言ってますが、僕は今やっている仕事に誇りを持ってますし、 今研究している事は上手く行けば日本頭頸部癌の治療を変える可能性があると確信しています。 専門バカも良くないですがそれが大学病院の醍醐味だと思います。 #だから今の仕事から離れられないのね〜(^^;)。
☆リンク。 ●asahi.com:医師臨床研修、大学病院側「見直しを」 学部長・院長会:http://www.asahi.com/national/update/0521/TKY200505210220.html
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